絵が上手くなった瞬間。

画力アップ

この瞬間からこの絵が描けるようになったという経験ありますか?

私がイラストレーターの事務所に勤めていた時、建物を描く事が多かったので
当然、空を描くことが多くなります。
そうです空を描く話です。
そこの事務所は、何で描いても出来栄えが良ければOKという自由な事務所で、描く道具も単純に大きい筆で描く達人から、当時、流行っていたエアブラシで描くなど、個人の好きな方法で描いていました。
空は画面の広い部分を占めるので、当然目立ちます。
ダイナミックな雲を描いたときには、社内で一目おかれ、羨望の眼差しで見られ本人は鼻高々で気持ち良いことこの上ないです。
私もそれを目指して空の勉強をしました。雲の形、季節による雲とか夕焼け、夜の雲とか初めはガッシュで描きましたがそのうちエアブラシが簡単そうなのでチャレンジして、なんかしっくりこないので筆で透明水彩で描くことにたどり着きました。
少し経験を積むと、かっこいい空の写真を真似てそこそこに描けると、商品としては成りったっています、がどうしても、しっくり来ません。
心のなかでモヤモヤがあります。
自分で納得できないものだから、空を見上げて観察したり 当時はインターネットのない時代ですから本屋さんで画集を見まくりました。たまに買いました。(笑
独立してアメリカに渡って修行中にもよく空を見ました。
ワシントンでは真っ青の雲ひとつない空は描いたら味気ないかなとか、
逆に年末のロンドンでは雲一面で青空が全く見えないグレー一色も絵では描きたくない、などと空ウオッチングを続けていると、その出来事が起こりました。


私の運転で家族で旅行に出かけた時のことです。
いつもの旅館に行く時のこと、ナビがない時代です、道は頭に入っています。
3回目で間違えることのないはずでしたが、その時は、うっかり高速の接続を通過してしまい、先の料金所で降りて一般道を山越えしなければならなくなりました。
この、うっかりが幸運をもたらしてくれます。
山道が続いて少し気分が悪くなったので、峠の見晴台で一休みすることにいたしました。
そこで、起こったのです。夕焼けの少しの時間の出来事です。
そこは展望台のような駐車場で360°見渡せます。
左手西側は夕日が沈んで行きオレンジ色の光がきらめいています。
右手東側は薄暗くなっていますがまだ青さが残っています。その間をつなぐように紫というか暗いピンクというか何とも言えない美しさです。
そして右手で雲の塊が風で左手に流れて光にあたってオレンジにきらめいてそこで消えていく。
そんな夕景の一瞬の美しさにしばらく見とれていました。
自分の中で空の色の七変化と雲は水蒸気で形を変え無くなる儚いもの、全て一瞬で刻々と変わる様子に心掴まれました。鷲掴みです。
このときに「空ってこういうもの!」ということが腑に落ちたというか、
大袈裟に言うと悟ったということだと思いました。
この時依頼、自信をもって空を描けるようになりました。
はたから見ていると、描き方が変わったとか色彩が前と違うとかではなく、
ただの気持ちの変化です。
こういった経験で絵が一段一段進歩していくのかと思いました。
道に迷って、峠で夕景を見ただけなんですけど(笑


今でも空を描くときはあの夕景を思い出します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました